2017年5月11日
連休明けでなかなか本調子にもどりにくいですが、授業おつかれさまでした。
知覚的補完に関して、授業後に質問を受けました。ぼくの説明がまずくてすみません。
なぜ知覚的補完が生じるのかに関する部分の説明がわからないということでした。少し補足してみます。
眼は固視微動することによって、形というか輪郭を検出しています。輪郭がはっきりしていれば、図と地の境目もはっきりしているこということであり、固視微動によって、輪郭も検出しやすくなります。図と地の色の変化が明確だからです。そのため、視神経の応答も強くなります。
しかし、輪郭がぼやけている場合、図と地の境目がぼやけているということであり、固視微動が生じていても、形の輪郭が検出しにくくなります。固視微動によっても、ぼやけた輪郭部分の刺激変化が少なくなるからです。つまり、図と地の色の変化を検出しにくくなります。そのため、視神経の応答が減ります。その結果、意味的には、固視微動が生じていない状態と同じになります。
となると、図の輪郭部分が、背景の色によって補完、つまり埋められます。そのため、図の部分がぼろぼろと欠けていきます。
例として、下の図の、円の真ん中を凝視し続けてください。少し練習というかこつが必要です。すぐに効果が表れなくても、根気よく凝視し続けていると、水色の輪が背景のオレンジによって埋められ、ところどころ欠けていきます。図をできるだけ大きくして見た方が効果が得やすいかもしれません(ただし、眼を少しでも動かすと、水色の輪は復活しますので注意してください)。
この現象も、水色の輪の輪郭がぼやけているため、つまり輪郭のエッジ検出ができなくなるために生じます。
この話の元ネタは、この図版の出典でもある、以下の本です。少し古いですが、とてもよい本です。ぼくの説明ではどうもようわからん!という人は、ぜひこの本を読んでみてください。
リンゼイ, P. H., & ノーマン, D. A. (著) [中溝幸夫・箱田裕司・近藤倫明 (訳)] (1978). 情報処理心理学入門I: 感覚と知覚 (カラー図版I, 120b) より